秋田県の森吉山や白神山地を背景に、自然の中で遊んだり学んだり。NPO法人 冒険の鍵クーンがご案内します。

あきた野生生物ジュニアレンジャー 活動報告

あきた野生生物ジュニアレンジャー「ジュニアレンジャーキャンプ 2016」
2016年 8月6日~8日   於:県立奥森吉青少年野外活動基地 他

<背景>
2012年に起きた八幡平クマ牧場の事件は、人にとってもクマにとっても悲しい出来事でした。まして、人と、クマを含む野生鳥獣や、原生的な自然との”適度な距離感”が、大切に守り継承されてきた、”マタギ文化”発祥の地でもある秋田県にとっては、時代とともにその”「人」と「野生生物」との適度な距離感”が希薄になりつつあるのかもしれないという、地域文化としての危機を思い知らされる出来事でもありました。私たちは、この危機に対して、人とクマを含む野生鳥獣や原生的な自然との、あるべき姿を再構築すべく、次代を担う地域の子供たちを中心に、「あきた野生生物ジュニアレンジャー活動」を始めました。

<目的>
① 地域内外の専門家や研究者とともに、秋田の自然や野生生物に関する「科学的な根拠」と「文化的な価値」の理解を深め、人と野生生物との良好な関係構築を模索し、行動する人材を育てる。 ② 活動を通じて、上記の基礎となる科学的データの蓄積を図る。

2016年 8月6日

午前(移動 ~ 昼食)

今年のキャンプは少しゆっくり集合して、各地から北秋田市の「森のテラス」へ向かいました。
到着後、気持ちのいい農村の景色を見ながらお弁当を食べました。

午後(畑の収穫体験)

地域の子供たちが育てた野菜を分けていただき収穫しました。
野生生物に注目したキャンプですが、人々の暮らしもすぐ近くにあることを実感しました。

(テンティング)

キャンプ場へ到着後、3日間の拠点となるテントをグループで協力して設営しました。

(ジビエクッキング ~ 夕食)

このキャンプの特色の一つである、獣肉クッキングにとりかかりました。今夜はエゾシカ。北海道でのシカとヒトとの状況を聞いたのち、後足1本をみんなで解体し、収穫した野菜といっしょにBBQの夕食をとりました。

夜(シャワー ~ 暗視スコープ ~ 就寝)

当初は、暗視スコープを持って夜の森へ出かける予定でしたが、今年はクマの出没が多いため、森へは出かけず管理棟のテラスからスコープで森を観察することにしました。同時に、コウモリの声を聴けるバッドデテクターも使ってみたところ、その声をたよりに飛ぶコウモリの姿を捉えることができました。
管理棟でシャワーを浴びましたが、どういうわけか今日に限ってボイラーが故障し水浴びになりました。

2016年 8月7日

朝(バードウォッチング ~ 朝食)

早朝に森沿部を散策しながらバードウォッチング。朝から暑い日だったので、数は多くありませんでしたが、アオバトやアマツバメなど鳴き声のみならず、双眼鏡やフィールドスコープでその姿を捉えることができました。ウォッチングから帰り、デリバリーの朝食をとりました。

午前(センサーカメラSD回収 ~ 画像解析)

6月から森に仕掛けておいたセンサーカメラ7台分のSDを回収し、回収したSDの画像を解析しました。キツネ・タヌキ・ネズミ・アナグマ・ツキノワグマが写っていました。特にクマは、親子で遊ぶ姿やコグマの兄弟の姿も写っていて、あらためてこの森は、ヒトも動物も共に利用し暮らしている森であることに驚きました。

午後(昼食 ~ フィールドサイン探し)

少し遅い昼食をとりました。
センサーカメラの画像から、ヒトがこの森へ来る理由はなんとなくわかるのですが(山菜取り、散策、草刈り、結実調査など)、では、動物たちはなぜ来るのか?について、グループで仮説を立てて、その証拠となるフィールドサインを探しに、森へまた出かけました。

(まとめ作業)

みんなで立てた仮説と森で見つけた証拠をもとに、動物たちがこの森へ来る理由を模造紙にまとめました。そこから、ヒトが森へ来る理由と照らし合わせて、ヒトも動物もお互いに過度な干渉無く、この森で暮らす方法を考えました。

(ジビエクッキング ~ 夕食)

今夜の獣肉は、クマ。地元のマタギさんに分けていただいたのですが、こちらはきれいに解体されて塊になっていて調理は楽でした。クマ鍋にして残さずいただきました。

夜(シャワー・就寝)

ボイラーの修理も終わり、温かいシャワーを浴びて就寝しました。

2016年 8月8日

朝(起床 ~ 朝食)

起床後、デリバリーの朝食を食べました。

午前(撤収)

キャンプ最終日、荷物整理の後テントも片づけました。

(ソーセージ作り ~ 昼食)

ヒトは動物の肉だけではなく、内臓もちゃんとありがたく食べてきました。日ごろ"腸"とはイメージしにくいソーセージやフランクフルトを手作りしました。
作りたてのソーセージとパンの昼食。
昼食を取りながらみんなで、なぜこのエリアでは、ヒトとクマとの遭遇事故が起きていないのか考えました。

午後(環境省 野生鳥獣センター見学)

3日間過ごす中で、出会ったり知ることのできた野生生物のうち気になる動物について、鳥獣センターの解説を各自で調べ、帰路につきました。

例年になく天候に恵まれた三日間で、予定したプログラムのほとんどを実施することができました。
今年は、この地域に限らずクマの出現情報が増えている中での開催だったため夜の森の奥へ入ることはできませんでしたが、フィールドには多くの新鮮な痕跡が確認されあらためて、野生生物との距離がたいへん近い地域であることを認識しました。そんな実感を踏まえて、プログラムでは”遭遇事故が起きていない不思議”=”共存のためのヒント”を参加者とともに考えることができたことは、たいへん有意義であったと感じています。
今回も、保護者の皆さま及び地域の皆様にはたいへんお世話になり心より感謝申し上げます。

<協力>
  • 環境省東北事務所
  • 秋田大学
  • 秋田市教育委員会
  • 公財 安藤スポーツ・食文化振興財団
  • 国民宿舎 森吉山荘
  • 国際教養大学
  • 北秋田市教育委員会
  • 大館市教育委員会

※このプログラムは、2016トムソーヤスクール企画コンテストにおいて支援団体として採択されました。

参加者の方へ
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