

あきた野生生物ジュニアレンジャー 活動報告
あきた野生生物ジュニアレンジャー「ジュニアレンジャーキャンプ 2017」
2017年 8月6日~8日 於:県立奥森吉青少年野外活動基地 他
<背景>
2012年に起きた八幡平クマ牧場の事件は、人にとってもクマにとっても悲しい出来事でした。まして、人と、クマを含む野生鳥獣や、原生的な自然との "適度な距離感" が、大切に守り継承されてきた、"マタギ文化" 発祥の地でもある秋田県にとっては、時代とともにその "「人」と「野生生物」との適度な距離感" が希薄になりつつあるのかもしれないという、地域文化としての危機を思い知らされる出来事でもありました。私たちは、この危機に対して、人とクマを含む野生鳥獣や原生的な自然との、あるべき姿を再構築すべく、次代を担う地域の子供たちを中心に、「あきた野生生物ジュニアレンジャー活動」を始めました。
そんな折、2016年春に鹿角で、今度は野生クマによる悲惨な人身事故が起きてしまいました。クマを含む、野生生物を "知る" ことのみならず、"適度な距離感" を維持するための具体的な方法についても、活動の中で見つけ出していく必要性を強く思い、活動を続けています。
<目的>
① 地域内外の専門家や研究者とともに、秋田の自然や野生生物に関する「科学的な根拠」と「文化的な価値」の理解を深め、人と野生生物との良好な関係構築を模索し、行動する人材を育てる。
② 活動を通じて、上記の基礎となる科学的データの蓄積を図る。
2017年 8月6日
午前(移動 ~ 昼食)
各地とも少しゆっくり集合して、北秋田市の「森のテラス」へ向かいました。
到着後、気持ちのいい農村の景色を見ながらお弁当を食べました。
午後(畑の収穫体験)
地域の子供たちが育てた野菜を分けていただき収穫しました。
野生生物に注目したキャンプですが、人々の暮らしが動物たちのすぐ近くにあることを知る目的です。
(テンティング)
キャンプ場へ到着後、3日間の拠点となるテントをグループで協力して設営しました。
(ジビエクッキング "エゾシカ" ~ 夕食)
このキャンプの特色の一つである、獣肉クッキングにとりかかりました。今夜はエゾシカ。北海道でのシカとヒトとの状況を聞いたのち、後足1本をみんなで解体し、収穫した野菜といっしょにBBQの夕食をとりました。
夜(シャワー ~ 就寝)
暗視スコープを持って夜の森へ出かける予定でしたが、BBQが盛り上がってしまい時間が遅くなったため、スコープは明日の夜にして、今夜は管理棟でシャワーを浴びて、各グループごとにテントで就寝しました。
2017年 8月7日
朝(バードウォッチング ~ 朝食)
早朝に森沿部を散策しながらバードウォッチング。特徴的でユーモラスなアオバトやメジロなど鳴き声を捉えることができ、数は多くはありませんでしたが、双眼鏡やフィールドスコープでその姿を見ることもできました。ウォッチングから帰り、デリバリーの朝食をとりました。
午前
(フィールドサイン探し ~ センサーカメラSD回収 ~ 画像解析)
テントサイトから、管理棟まで森の中の遊歩道を通り、フィールドサイン(動物の痕跡)を探しました。糞が2種類(肉食系のものと草食系のもの)、クマがアリの巣を狙った跡、カモシカ・クマの噛み痕、クマの毛 などが見つかり、こんな近くに野生生物が確かにいることが確認できました。
管理棟に到着後、6月から森に仕掛けておいたセンサーカメラ7台分のSDを回収し、回収したSDの画像を解析しました。テン・アナグマ・ツキノワグマ・カケスが写っていました。クマの大量出没年だった昨年に比べると、今年は少な目だでしたが、本来はこれくらいの頻度なのかもしれません。
午後(昼食)
少し遅い昼食を管理棟でとりました。
(写真立てクラフト)
今回センサーカメラではすべて動画で撮ったので、写った動物のベストショットをキャプチャー。撮れた画像の中からお気に入りの写真をお家で飾れるように、小枝を組み合わせた写真立てを作りました。写真の一番人気はキツネ。女の子はやはりウサギでした。
(ジビエクッキング "クマ" ~ 夕食)
今夜の獣肉は、クマ。地元のマタギさんに分けていただいたのですが、こちらはきれいに解体されて塊になっていて調理は楽でした。クマ鍋にして残さずいただきました。
夜
(暗視スコープで夜の森観察 ~ シャワー・就寝)
暗視スコープを持って夜の森へ出かける予定でしたが、今年もクマの出没が懸念されたため、森へは出かけず管理棟のテラスからスコープで森を観察することにしました。思いのほかくっきり見えるスコープの威力に驚きながら、コウモリの姿をとらえることができました。その後温かいシャワーを浴びて就寝しました。
2017年 8月8日
朝(起床 ~ 朝食)
起床後、デリバリーの朝食を食べました。
午前(撤収)
キャンプ最終日、荷物整理の後テントも片づけました。
(ソーセージ作り ~ 昼食)
ヒトは動物の肉だけではなく、内臓もちゃんとありがたく食べてきました。日ごろ"腸"とはイメージしにくいソーセージを手作りしました。
作りたてのソーセージとパンの昼食。
野生生物との距離感を測る中で、食べて食べられる関係性は一番の基本。命を頂く以上、残さず食べました。
午後(環境省 野生鳥獣センター見学)
3日間過ごす中で、出会ったり知ることのできた野生生物のうち気になる動物について、鳥獣センターの解説を各自で調べ、帰路につきました。
天候に恵まれた三日間で、予定プログラムはほとんど実施できました。
昨年のような全国的なクマの大量出没と比較すると、クマに関してはずいぶん落ち着いた状況に戻ったように感じました。とはいえ、フィールドにはクマに限らず多くの新鮮な痕跡が確認され、あらためて、野生生物との距離がたいへん近い地域であることを認識しました。そんな実感を踏まえて、今後も、"遭遇事故が起きていない不思議" ="共存のためのヒント" をプログラムを通じて参加者とともに考え、人身被害を起こさない方法を探っていきたいと思います。
今回も、保護者の皆さま及び地域の皆様にはたいへんお世話になり心より感謝申し上げます。
- 環境省東北事務所
- 秋田大学
- 秋田市教育委員会
- 公財 安藤スポーツ・食文化振興財団
- 国民宿舎 森吉山荘
- 国際教養大学
- 北秋田市教育委員会
- 大館市教育委員会
※このプログラムは、2017トムソーヤスクール企画コンテストにおいて支援団体として採択されました。
当プログラムの写真ダウンロードサービスは終了しました。